地域に寄り添い人々とつながる新しい介護施設「おとなりさん」

K.Yokoyama K.Yokoyama
あおいけあ小規模多機能型居宅介護施設+共同住宅他『おとなりさん』, Smart Running一級建築士事務所 Smart Running一級建築士事務所 Commercial spaces
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今回紹介するプロジェクトは、高齢化社会の中での新しい暮らし方や施設の在り方として注目される小規模多機能型居宅介護施設「おとなりさん」です。高齢者福祉の問題点は、場合によっては高齢者が社会から隔離されてしまう状況ができてしまうこと。このプロジェクト「おとなりさん」に求められたことは、高齢者が社会との関係を持ちながら日常を過ごせる空間でした。そのため施設の建物は視覚的にも空間的にも開放された雰囲気があり、またフレキシブルに作られた部屋は利用状況に応じて自由に対応することができる作りなっています。このプロジェクトは、千葉県を拠点に活動しているSMART RUNNING一級建築士事務所によって手掛けられました。

大屋根の下に様々な機能が集まる介護施設

ロケーションは神奈川県藤沢市。このプロジェクト「おとなりさん」は、認知症の方々をサポートする小規模多機能型居宅介護施設に、食堂とカフェ、そして共同住宅が集まった新しい形の建物です。小規模多機能型居宅介護施設とは、認知症の高齢者をデイサービス、訪問、ショートステイと主に3つのサービスを軸にケアする施設のことを言います。建物は、大屋根に包まれた印象的な外観をしており、開放感のあるガラス張りの1階や広いテラスなど、介護施設とは思えないモダンな作り。地域のランドマークとしても目を引く存在感で、気軽に立ち寄りたくなるようなオープンな雰囲気があります。

人々との関わり合いが生まれる1階

こちらは1階の小規模多機能型居宅介護施設の様子です。自然素材がふんだんに使われており、優しい雰囲気に包まれた室内空間となっています。できるだけ仕切りを取り払い、空間に一体感を持たせることで、認知症高齢施設を閉鎖的なものにしてしまわないよう工夫されています。これによって利用者が近隣の人々と交流したり、地域社会の中で日常を感じられたりするこということです。介護施設というカテゴリーを超えた、地域社会の新しいコミュニティー空間としての役割を感じさせます。

一般利用も可能な食堂スペース

こちらは1階の食堂の様子です。小規模多機能型居宅介護施設に隣接する食堂で、一般利用が可能です。例えば地域の人や利用者のご家族なども、気軽にここで一緒に食事を楽しんだり料理をしたりすることが出来るそうです。オープンな作りのキッチンによって、働く人の顔や姿が見られるのも特徴です。この食堂スペースと小規模多機能型居宅介護施設は、引き戸によって空間を分けることが出来ますが、ショートステイの利用時以外は仕切らずに広々と使われているそうです。それによって利用者同士で交流を持つ機会ができたり、人々との新たな関係が作りやすくなったりと、自由で居心地のいい雰囲気が生まれます。

住人同士が交流できる共同住宅空間

こちらは2階の共同住宅スペースです。全部で3戸ある住戸には、家庭の事情などで生活拠点が必要になった高齢者や、この施設でボランティアをしている学生が住み、その内1戸は近隣に解放されたカフェが開設されています。ウッドデッキの広いテラスは住人同士の交流スペースとして機能し、生活の中で自然な関わり合いが持てるようになっています。またこの2階には、テラスに面して多目的室が設けられており、吹き抜けによって1階の食堂と空間的につながることでお互いの階の気配も伝わりやすくなります。

地域の人々と社会をつなぐ場所として

様々な役割を果たすスペースが、分けられるのではなく吹き抜けや引き戸を通じてつながり、そこで人々が関わり合うことで、多様性のある空間とそこで営まれる豊かな日常を作り出しています。この建物は、「大きな傘」と呼ばれる大屋根の下に、大人も子供も高齢者も自由に集うことが出来ます。それは同時に、世代を超えた人々が色々な形でつながりを持つ「閉じない村」のような存在となり、地域のシンボルとして温かく思いやりのある時間を自然と育んでいきます。これからの高齢化社会の課題を前にして、大人も子供も高齢者も、みんなが豊かに暮らすための一つのアイデアを、この「おとなりさん」は私たちに示してくれているのかもしれません。

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