固定概念を排除した、創造と可能性が生まれる家

K.Matsunaga K.Matsunaga
FLY, 株式会社CAPD 株式会社CAPD Eclectic style houses
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「住宅」を思い浮かべた時に、自然と必要な部屋や場所と役割を結びつけて考えがちかもしれません。世の中の大多数の住宅が、まず玄関、LDK、水回り、ここは何をする場所で、という割当てがある間取りのため、見ている数が多いほどそう考えてしまうのは自然なことでしょう。しかし、自分たちのライフスタイルに当てはめたときにそれが最も良いかというと、もしかすると規定の条件を当てはめる必要がないこともあるかもしれません。今回ご紹介するのは、多趣味な住まい手一家が持っている感性を大切に生かすことができる、スペースを柔軟に使いながら創造性と可能性を開放させるための家です。株式会社CAPDは、住まい手の感性と想いを汲み取り、従来のベーシックな間取りにとらわれない住まい手のための家を提案しました。

2つの箱に可能性を込めたモダンな外観

シンプルでモダンな、長方形の箱を組み合わせた外観。ホワイトがベースとなったものと個性的なえんじ色が目を引くものが組み合わさっています。えんじ色の箱は、下がピロティになっており箱が浮遊しているようなさりげないインパクトのあるデザインが興味をそそる存在となります。通常は駐車スペースとして使われることも多いピロティですが、この家の駐車スペースは手前側に確保しているため、このピロティは住まい手の感性によって自由に使うことのできる、可能性が広がるスペースとして設けられました。

ガラスが外と内部の空間をつなぐエントランス

この家には、「玄関」と呼ばれるスペースが設けられていません。2階まで繋がるガラス窓の一部がこの家のエントランスとなり、外から家の中に入るとごく自然にテーブルのある土間のような空間が広がります。あえて言葉で表すとすれば、この空間すべてを「玄関」と呼ぶのかもしれません。世間的に呼ばれる玄関や、玄関ホールとしての形を持たず、あくまでも通過点として限定的にその機能をもたせ、広がりのある空間と一体化させることでまるでカフェやショップ、アトリエのような多彩な顔を持つスペースが生まれています。限定的な機能を排除することで、コミュニティとしても、また住まい手の趣味を生かす場としても、どのような用途にも使うことができる可能性を秘めた場となりました。

さまざまな可能性を生むための共用スペース

エントランスから内部に入った角度から見てみると、インダストリアルな家具や照明、まるでヨーロッパのインテリアにあるような什器や色遣いが魅力的な空間となっています。大きなヴィンテージ風のテーブルは作業台としても、またコミュニティとしてティータイムを楽しむ場としても、フレキシブルに使うことができるでしょう。使い方や用途を「玄関」として限定しないことで外と中のつながりを生み、家の面積を有効に使うことができるとともに、創造的でさまざまな可能性が広がる魅力を兼ね備えた空間になっています。

広がりを持たせる窓のあるLDK

螺旋階段を登ると、浮遊している箱を含めたスペースがこの家のLDKと呼ばれる空間になっています。この家が建つ場所は山手を臨む住宅団地。周囲を住宅に囲まれている中、2階にLDKを配置することでより家の中に光を取り込むことができ、また山の景色を臨めるように窓を設けることで広がりを感じる工夫がなされています。住宅地の中では、日をどうやって取り込むか、またプライバシーをどう確保するかがしばしば悩みの種になります。この家では、吹き抜けや2階に生活スペースを配置することでその問題と可能性をクリアしています。また、ダイニングとキッチンをまたぐ水平に大きな窓は視線の広がりを感じさせ、窓から広がる空や山を眺めながら、ほっとする居心地の良さを感じることができます。

住宅らしさとは何かを考える窓

エントランスから、2階へとつながる窓はこの家を彩るひとつの役割を果たします。透明な窓越しに見える螺旋階段がまた存在感とデザイン性を高める要素になっています。しかし、エントランスや玄関が透明であるということに抵抗がある方ももしかするといるかもしれません。店舗ではない限りなかなかそういった住宅を見かけることはありませんが、従来の常識や、「普通はそうなっている」という考えを手放した時に生まれる暮らしの豊かさや空間は何倍にもなってこの家にたくさんの可能性をもたらすこととなるでしょう。自分たちのライフスタイルに合った空間こそが、本来の「住宅らしさ」と言うのかもしれません。

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