山間部で曇天が多い場所にある敷地に、明るく安定した室内気候を作り出したいと考えた建築家が提案したのがポリカーボネイト波板で空間を構成する住まい。ポリカ波板は外構や温室等で多用される材料なので、意外に思われる方もいるでしょう。しかしその意外性と軽快な素材感が不思議な魅力を生み出しています。島田陽建築設計事務所/TATO ARCHITECTSよるこちらの住まい、早速見て行くことにしましょう。
PHOTO by KENICHI SUZUKI
1階レベルは地面から760㎜掘り下げられ、基壇は1800㎜もの高さがあります。その四角いボリュームの上に3つの家型の小屋がならび、小屋の間の空間は庭とも屋上ともいえる場所です。良好な地盤に基礎を立ち上げ、また、基礎蓄熱型床暖房を使用するにあたって、地熱を利用することで更に安定した性能を発揮させるために1階床面が地盤面より760㎜も掘り下げられました。
1階床面のレベルを下げることによって自動的に屋上面も下がり、敷地全体がつながりのある、庭のようなスペースとなっています。屋上に腰かけても、1階にいる人とこのようにコミュニケーションが取れるのは、不思議な感覚ではないでしょうか?
屋上でありながら庭のような空間、というのが良く伝わってくる光景ですね。3つの家型の小屋は、それぞれ、予備室、サニタリー、ライトルームとされ、サニタリーとライトルームに関しては、下階への採光、通風の役割も負っています。ポリカ波板という半透明の素材を使用することによって、心地よい光を大きな面から取り込むことができ、プライバシーを保ちながら明るい空間を確保することができます。
主な生活空間は1階に配されています。床面が低く設定されているものの、大きな開口や上階から十分な光をとりこむことができ、明るく開放的な空間となっています。
こちらはサニタリー棟の様子。プライベートかつ、開放的な空間が魅力的です。ポリカ波板と軸組の間には温室用の吸水・吸湿・保温用シートが挟まれ、内壁側はポリカ複層板で断熱層が形成されています。このサニタリー棟には更に壁と天井内に透光性の断熱材を充填することで断熱性能を上げているそうです。
カーテンで仕切ることのできるバスルームの向かい側には洗面スペースが配置されています。波板で囲まれた空間には不思議な柔らかさと透明性が感じられます。