失敗しない二世帯住宅プラン

A.Imamura A.Imamura
House in Hashie, 矢内建築計画 一級建築士事務所 矢内建築計画 一級建築士事務所 Eclectic style houses
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「二世帯住宅」が2015年1月から実施されている相続税増税対策の点から注目されています。また親世代と子世代が抱える住宅資金・教育資金・老後資金の課題や悩みを一緒に解決できる方法として、二世帯住宅を考える人が多くなってきました。今回は、そんな住居スタイルのメリットをご紹介していきます。

中庭で繋ぐ、部分分離型

親子とはいえ複数の世帯が同じ家に暮らすことによる気づかいや気兼ねもあるでしょう。二世帯住宅「部分分離型」は、寝室やLDKはそれぞれ分離、玄関をはじめとして浴室、トイレ等を共有するタイプです。LDKの一部を共有としたり、トイレも分離する等、様々なパターンがあります。「部分分離型」のメリットは、二世帯の間の協議により共有する部分と分離する部分とを合理的に分けることができます。世帯の間で合意を得やすいので、比較的デメリットは少ないですが、同居型に比べると、広い床面積が必要であったり、建築費もかなり多く必要となります。

こちらは、中庭が程よい距離感で家族をつなぐ神谷徹建築設計事務所が手がける二世帯住宅。玄関は二世帯共有、二階は親世帯と子世帯に住居が別けられながらも中心に位置する中庭への窓やテラスが完全に世帯分離することなく心地よい距離感で繋げています。中庭は木漏れ日や光を感じるだけでなく、家族が自然に集う大事な空間と作用しています。

一緒に同居型のバリアフリー住宅

二世帯住宅「同居型」は、それぞれの世帯の寝室を除き、玄関、LDKをはじめ浴室、トイレ等ほとんどを共有するタイプです。メリットは、互いの世帯の相互理解が欠かせないものながら、ひとつ屋根の下で大家族ならではの良さを共有できます。狭い床面積でも比較的に家全体をゆったりと計画することが可能です。特に建築コストのかかる水廻りが共有されるため、全体の工事費を抑えやすい傾向にあります。また、住居空間を広々と取れるため、高齢者や車いすを考慮したリビングやバスルームのバリアフリーをデザインしやすく、老若男女やハンディキャップを問わずみんなに優しい住居がデザイン可能です。

異なるテイストで別ける分離型住居

二世帯住宅「分離型」は、それぞれの生活スタイルや趣味を最も尊重できます。デメリットは、2軒分の床面積が必要となり、敷地や予算が潤沢な必要があります。これを無理をしてしまうと、かえって各世帯が狭く住みづらいものとなってしまいます。しかし、区分登記が可能となり、住宅ローンや税金面で有利となる点を考慮すると長期的なプランではお得かもしれません。

こちらは、TERAJIMA ARCHITECTSが手がける分離型二世帯住宅。アプローチを抜け玄関の扉を開けると広がる土間を挟んで親世帯、子世帯が分かれて住んでいます。子世帯は明るいホワイトベースのカフェのような住居空間、親世帯は和モダンの空間に仕上げられ、フローリングの深い色味や紫のシェード、ぼんぼりのような灯りが落ち着いた雰囲気を演出します。庭に面したリビングから、いつでも美しい緑を眺めることができます。

税金面でのメリット‐相続税

2015年1月から実施されている相続税増税対策として、「二世帯住宅」が注目されています。相続税の基礎控除額の縮減による増税対策として、「小規模宅地等の特例」という相続税の減額制度が存在します。この特例の1つに「親と同居していること、生計が一緒であること」を基本に、相続する子どもが自身の持ち家を持たず、親と同居または二世帯住宅で一緒に暮すことで評価額の80%評価減が可能になります。例えば、Aさんという男性がいます。高齢のお母様が古くなった実家(土地200㎡)にお一人で住まわれているとします。Aさんが「自宅を別の場所に持っている場合」「借家に住んでおり転居し同居する場合」「新しく建て一緒に暮す場合」「母の土地に別途Aさん所有の自宅を建てた場合」と、それぞれの状況により相続税は大きく変わります。

住宅ローンと減税、そして住まい給付金

二世帯住宅を建てる場合は、建築費も高めの傾向があるので、消費税増税前に建てた方が良かったのでは?という声もありますが、一概にそうとも言えません。消費税増税後に家を建てる場合は、住宅ローン減税の控除限度額が拡充されます。そのため、一般住宅で2,000万円(認定住宅で3,000万円)より多く借入れをする場合は、増税後に家を建てた方が住宅ローン減税を多く受けられる可能性があります。また、年収が一定額以下の方には「すまい給付金」も支給される予定です。国土交通省の「すまい給付金」のページで、もらえる給付金額や受けられるローン控除額の目安を試算することができますので試してみましょう。

こちらは、二つの木造平屋で作る住宅。例えば、相続税増税対策として親世帯の土地に二世帯住宅を建築、また建築費が比較的抑えられる木造平屋住宅はどうでしょうか?長期的にメンテナンスメンテナンス可能な木造住宅、シンプルな木造平屋構造ではバリアフリー住宅が簡単で、また世帯の違いを考慮した分離型住宅の建築初期費用も通常よりおさえられるのではないでしょうか。

安心感と老後

親世代と子世代で抱える課題と悩みは異なります。例えば、子世帯は「マイホームを買いたいが、資金とローンの心配」、「共働きと保育費用のバランス」、「親の介護心配」。一方親世帯は、「ふるくなった住まいを立て替えたい」、「老後生活資金を多く残したい」、「金融資産と相続税対策」など。こうした親と子が抱える課題や悩みを解決できる方法として、二世帯住宅を建てるという考え方があります。また、今では三世代同居という考え方も出てきました。国土交通省は、三世代が一緒に住む家を建てる際に工事費を補助する仕組みを2016年度からスタートさせています。また補助金につづいて三世帯住宅では、リフォーム投資型減税やリフォームローン型減税の優遇もあります。増税へと向かう中、税制優遇を上手に活用することで賢く心地良く暮らしていきたいですね。

設計者に間取りアドバイスをもらう

異なる世帯同士となると、家づくりに加わる方の人数は増え、 異なる世代や異なる生活スタイルで意見の相違が増えたり、費用の負担に関連することも重なり、住宅の方向性を定めるのは極端に難しくなってきます。 このような場合は、信頼できる第三者にお互いの家族像を見直してもらい、二世帯間の適正な距離の提案を受けることが二世帯の共同住宅の成功の大きな鍵のひとつになります。 建築の知識と共に、建築計画を何度も経験している設計者が家の基本的な計画段階から話に加わることで、失敗しない家づくりに非常に有効と言えるでしょう。

【二世帯住宅については、こちらの記事でも紹介しています】

二世帯住宅も住まいのかたちは様々。完全同居・部分共用・完全分離型のメリット・デメリットまとめ   

完全分離型の二世帯住宅を成功させるためのポイントまとめ   

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