人・自然・住まいのかけはしをつくる建築家7選

A.Imamura A.Imamura
FLIGHT HOUSE, SQOOL一級建築士事務所 SQOOL一級建築士事務所 Modern houses
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建築家は、ただ住む場所をつくるのではなく、同時に私達の社会の課題を解決する新しい住まい方を提案してくれます。家族や会社といった従来のコミュニティが解体されつつあるなかで、私たちの生活の基盤をなす「住まい」の進化は、私達に新しい人・自然・住まいのつながりをつくり出します。今回は、そんな新しい家の在り方を提案する7人の建築家をご紹介してきます。

自然の力を住まいに取り込む建築家

HAN環境・建築設計事務所は、冷暖房設備に頼らないパッシブデザインの家を得意とします。建築的工夫によって太陽のエネルギーを初めとする自然の恵みでまかない、それでも足りないところを合理的な冷暖房設備で補充するという考え方をパッシブデザインといいます。自然を外敵として遮断してしまうのではなく、太陽、風、緑、土などの自然の恵みを受け入れ呼応しながら居心地の良い空間をつくっていきます。

クレジット: 撮影:吉田誠


「住まいの写真」ページでは様々な種類の家を紹介しています。◀

※ リビングの写真ページ

パッシブデザインと大らかな間取り

パッシブデザインの仕組みとしては、二階リビングを取囲むようにグルリと回廊を設け、窓の外側で遮光できるように計画されています。また、屋上へ上るペントハウスには高窓が設けられることによって夏の熱気を排出します。オープンなLDKは、家族みんなが自然と二階へ集まり、天気の良い日には富士山を望むルーフテラスから屋外を気軽に楽しむことができます。


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森林公園の家

こちらも同じくHAN環境・建築設計事務所が設計した森林公園の家と名付けられた住まい。第2回(2014年度)埼玉県環境住宅賞の最優秀賞を受賞したこの住まいは、日射遮蔽や採光、通風、排熱などの自然の恵みを活かすパッシブデザインの仕組みを取り入れられています。

クレジット: 撮影:吉田誠


【住まいについては、こちらの記事でも紹介しています】

 建築家の自邸5選 – 建築家が住む自分の家!

自然の恵みを受け入れるから気持ちいい 

この森林公園の家の室内は、一階の半分以上を土間空間としたキッチン、ダイニング、ワークスペースで構成されています。薪ストーブコーナーは、冬の陽射しを蓄え、土間には温水床暖房を配し快適な住環境となるよう計画されています。木がふんだんに使われた空間は、木の調湿機能と共に温もりのある空間をつくります。

環境の美しさを暮らしに

こちらは沖縄南城市を拠点とするSTUDIO COCHI ARCHITECTSの手がける住まい。自然豊かな南城市の海を高台から望むこの住まいは、ARCHITECTURE ASIA AWARDS 2019で銅賞を受賞しています。このコンペティションは、アジアの新進建築家の作品と談話を促進し、アジア建築家の現代的な基準を確立することを目的としています。

クレジット: ©︎Jingu Ooki

海の美しさと共に

STUDIO COCHI ARCHITECTSが手がけたこの「南城市の家」は、まさに沖縄の魅力をダイレクトに味わうことのできる住まいです。最高の眺望と豊かな自然とコントラストを成すモダンなコンクリート外観とガラス素材を多用したシンプルな間取りは、室内にいてもまるで自然に溶け込むような一体感を感じることができます。

地球の懐で暮らす

こちらは沖縄出身のATELIER NEROが手がける住まい。2012年に第10回住宅建築賞奨励賞を受賞したこの家は、円形状のドームが個性てな外観をつくります。琉球石灰岩の石段を上って屋上へ上ると緑化した屋根に上ることができ、集落の風景や人、空や緑を身近に感じて暮らすことができます。


家族と共に年を重ねる住まい

この有機的な住まいの室内は、シンプルでオープンな構成です。程よい距離感を保つロフトや土間空間によって、家族それぞれが心地よい居場所を見つけ、思い思いの事をしながらも家族の気配を感じることができます。室内建材は、自然素材で仕上げられ、壁の漆喰や木部の柿渋は、家族と共に美しく経年を重ねます。

有機的な生命のリズムとコミュニティ

遠野未来建築事務所は、有機的な命のサイクルを感じさせる建築を得意とします。「みらいのいえ」と名付けられたこちらの住まいは、伝統的民家と環境共生を組み合わせて設計されています。伝統構法の大工とともに、一般公募よるワークショップで工事が行われ、延べ200名が家づくりに参加しています。 この家づくりを契機に地域や現代のコミュニティをつくる考えは、東日本大震災以降のまちづくりのキーワードの一つともなっています。

その土地の素材と気候、そして匠の技と共に

遠野未来建築事務所は、その土地の素材や気候をあらかじめ調査し、基盤である土と、大工、左官、木工職人といった匠の技が一つとなることで、モダンかつ洗練された建築作品を生み出します。曲面の土壁と版築の蓄熱壁は、室内に有機的なリズムを与えると共に、内部の蓄熱効果を上げるこうかもあります。まるで住まい自体が呼吸をしているような感覚で、家と共に生きるという感覚を住まい手にもたらしてくれます

クレジット: Tono Mrai architects

阪神・淡路大震災を経験した建築家だからこそ

こちらは、神戸三宮にあるSQOOL一級建築士事務所の手がける住まい。眼下を見晴るかす絶景に向かって緩やかに開き、また飛び立っていくような住まいは「FLIGHT HOUSE」と名付けられています。敷地は阪神・淡路大震災の時に、南側擁壁にダメージを負った民宅急傾エリアに立地し、住宅を建築するためには兵庫県土木の許可が必要で、申請難易度が高い地域でした。

クレジット: 笹の倉舎/笹倉洋平

FLIGHT HOUSEに込められた復興と眺望

圧倒的な眺望を真正面から取り込むために、緩勾配の片流れ屋根を採用し、南へと大きく開口部を開く設計です。LDK南面全体をガラスとし、外部環境とダイレクトに繋がる建築は、まるで神戸の眺望と一体化するような空間を作り出します。阪神・淡路大震災を経験した建築家だからこそ、「FLIGHT HOUSE」には復興と美しい眺望を感じる暮らしを提案することが出来るのかもしれませんね。

住まい手らしさを感じ取る森のすみか

自然豊かな三重県名張を拠点とする森本建築事務所は、自然を五感で感じる家を提案してくれます。「森のすみか」と名付けられたこの家は、自然豊かな場所で定年後の夫婦が暮らす終の棲家です。敷地周辺の森の形状に呼応する美しい方形屋根の家がシンボルです。屋根上に設けられた小さなテラスに座わると、光と影、風の音、におい、気配に敏感になり、忘れていた本来の感覚がよみがえってくるようです。

クレジット: 植村タカシ

地産地消で土地を愛おしむ

「森のすみか」の室内は、梁・垂木・天井・内壁・床は杉材とし、森の住まいにふさわしい空間が広がります。県産材の木材を使うことで、適正価格で質の良い木材を手に入れることが出来ます。また地域の大工さんとの家づくりは、地域の雇用だけでなく、その地域らしい家の在り方や職人の技を受け継いでいくという視点からも多くのメリットがあります。

建物の空気感がコミュニティをつくる

福岡市を拠点とする環アソシエイツ・高岸設計室は、和の空気感が漏れるような建築を得意とします。こちらは、入居者のコミュニケーションを促し、集まって住む楽しさを感じてもらいたいという想いで設計された賃貸住宅です。住宅は、多様な生活、指向性、活動を内包するような設計で大きなウッドデッキで各家庭の繋がりを促します。

コミュニティを生む場所に必要な余白

それぞれの家は、まるでペンションをイメージさせるような温かい木の外観で、ウッドデッキを囲むように配置されています。核家族化が進み、世代を超えて孤立が拡大し問題となっているなかで、「住まい」を中心に構築されるネットワークの重要性を提案するこの賃貸住宅には、クリエイティブ溢れるコミュニティを生む場所に必要な余白や空気感が感じられますね。


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